湖のくまさん 実際に熊は生息していないのでご安心を。(12日目/テカポ)

少し話が前後するが、マウント・ジョンを下山し、湖に沿った道を歩いている最中、後ろからにぎやかな声が聞こえてきた。

中年夫婦
Wao Wao!

中年の夫婦だが、やたらと声が大きい。
この景色に感動するのは分からないこともないけど・・・。

その上、年の割に、やたらと歩行スピードが速い。
自称「散歩師」である俺が、中年の方に追いつかれるわけにはいかない。

たぬ
なんだその無意味なプライドは?

俺も歩行スピードを上げる。

だがしかし、中年夫婦も、森のくまさん並についてくる。差が広がらない。

えだ:闘争心
やるねぇ。

ならば本気で引き離しにかかろう!

競歩的なスピードで歩くと、流石に見えない距離にまで引き離すことができた。
危なかった。こんなところで負けるわけにはいかない。

たぬ
意味が分からない・・・。

町の入り口にさしかかったところで、自尊心を守りきった安堵感に浸り、湖を見ていた。

写真中央、何の鳥?

なんか浮いてる。

カモ・・・じゃない。シルエットが違う。
黒鳥でもないし・・・まあ、名前はいいとして、この鳥を見ていると驚かされる。

潜水すると、全然浮いてこない。

気になって数えると、90秒くらい潜っていることが分かった。


こうして湖畔で、鳥の潜水時間を計測していると、後ろからさっきの中年夫婦が到着した。
そして俺に大きな声で呼びかける。

中年夫婦
Hei! Is this yours?(おーい!これ君のか?)

手に、俺のモバイルパソコンのクッションケースを持っていた。

モバイルパソコンで動画を撮影したとき、落としていたみたいだ。
この中年夫婦、最初から景色を見て感嘆の声を上げてたんじゃなく、落とし物を渡そうと呼びかけてくれていたんだ。

ある日くまさんに出会って追いかけられた、どこかのお嬢さんと同じ状態だ。

♪お嬢さん お待ちなさい ちょっと 落とし物♪

俺の場合、たちが悪く、善意ある人たちから意味不明の自尊心で逃げていた。

たぬ
愚か者。

自分の愚かさを恥じ、中年夫婦に深くお礼をした。

  • 一言 嗚呼、アホ丸出しの記録。